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『ノスタルジア』 埜田 杳  

ノスタルジア (角川文庫)
眠れない夜、ふと窓を開けてみる。まるで深海のような街。その海の底を漂うように歩く同級生矢鳴と出会う。
その夜をきっかけに言葉を交わすようになった僕と矢鳴。彼は僕に「あれ」 ―体の一部に羽が生え、飛んでいってしまうという奇病― に罹っていることを告げる。

読み終えてあらすじを思い返してみると、設定自体は現実とは思えないファンタジックなものなのだけど、読んだ印象は不思議とファンタジーではないのです。かといって現実的というわけではなくて、「僕」が窓の外に見たような、暗い、けれども透明な海の底をたゆたっているような、そんな感じでしょうか。

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『桃山ビート・トライブ』 天野純希 

桃山ビート・トライブ
時は安土桃山時代、豊臣による治世にも翳りが見え始めた頃。
三味線を片手に諸国を巡り「いずれ天下一」を豪語する藤次郎。笛職人の息子に生まれ、その道を学ぶうちに笛を作るのではなく奏でるほうで身を立てたいと思い立った小平太。遠い異国からやってきて一時は信長に仕え、いつかは故郷へ帰ることを望む弥介。京の女猿楽の中でも一、二を争う役者だと言われながら、本能が望む踊りを求め続けるちほ。
4人が出会い、舞台の幕が上がる。

とにかく、勢いがすごい。「破天荒」という言葉が似合いますね。
時代は確かに安土桃山。信長、秀吉、三成、出雲のお国と歴史上の人物がどんどん出てくるし、日本と似たような架空の世界という印象ではない…のだけれど、明らかにこの時代には存在しない「メロディ」とか「リズム」なんていう単語があたりまえのように出てくる。
それが「この時代にこの単語を使うなんて」と思うか、「この感じ、面白い!」と思うか。たぶんバランスがいいんでしょうね。私はすっかり乗せられちゃいました。

あと、印象に残ったのは秀次の描かれ方。
秀吉の甥として生まれたという理由で関白の位にまで昇り、淀に子ができたことで邪魔者となり位を追われた彼は、私が今まで見たドラマや小説の中ではあまり個性がなく、時代に翻弄された人という印象しかなかったのですが、この小説の中の秀次はとても魅力的です。
そのかわり三成はずいぶんな役回りですが(苦笑)

彼らの勢いに乗せられて、一緒に盛り上がって、ラストまであっという間。
悲しいこともあったけれど、前に向かってつき進んでゆく彼らの姿が目に残り、読後感はとてもいいです。
荒いところも多いとは思いますが、その荒さも魅力だなーと思う一冊。

遠州寄席 

昨日、柳家小三冶さんのらくご会に行ってきました。

小三冶さんのらくごを生で聴くのははじめて。
以前テレビで観た「死神」がとても印象に残っていたせいか、少ししぶい雰囲気かと思い込んでいたので、実際に話しはじめた小三冶さんがとてもお茶目で自由なのにびっくりしました。

とにかく枕の話が長い長い(笑)
1時間近く話していたから、もしかしたらあれは枕じゃなくて予定通りの話だったのかな。
あの話をしていたかと思ったらこの話、かと思ったら歌まで披露してくださって、どこまでいっちゃうのかなさっきの話はどうなっちゃったのかなーと心配になった頃に元の話に戻ってくる、という具合。
いやー、楽しかったです。

演目は「小言念仏」と「青菜」。
どちらも楽しい噺だったので、今度機会があったらちょっと背筋が寒くなる噺や人情噺も聴いてみたいです。これを縁に、これからも来てくれるといいな。

『鷺と雪』 北村薫 

鷺と雪
シリーズ3作目。前の2作を再読し、いよいよこれで完結かと思うと読むのが惜しいように思えてならないのだけれど、えいっと開いて読み始めました。

前作を読み終えたとき、だんだん重くなっていく謎の答えに「次はどうなってしまうのだろう?」と思ったのだけど、その心配は見当違いだったようです。
行方不明になった人とそっくりなルンペン、いるはずのない人が写った写真。縁あって関わった謎の答えをベッキーさんの的確な助言によって英子が解いていきます。
でもその謎について調べているときに見えること、遭遇することのどれもに時代の影が垣間見えて、語られている出来事は緊迫したものではないはずなのに、読んでいるこちらの緊張感は増していきます。

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『玻璃の天』 北村薫 

玻璃の天
『街の灯』に続いて再読。
2冊通して読むと、物語の中で解かれる謎が、はじめは英子とは直接関係のないものだったところから、少しずつ近いものに、そして重いものになっているのだということがよくわかります。

これで準備は整ったわけで、これから『鷺と雪』です。

軍国主義へとつき進んでいく日本で、英子とベッキーさんは何を見て何を考えるのか、背筋を伸ばして(気持ちは、ですが)見届けたいと思います。
あと、期待でどきどきするのは、「幻の橋」で、これは運命の出会いというものでは!?と思った彼と、またどこかで出会えるのかどうか、ですね。

『街の灯』 北村薫 

街の灯 (文春文庫)
先日出版された『鷺と雪』でベッキーさんシリーズは完結、なのだそうですね。
昭和初期の雰囲気がなんともいえないこのシリーズ。とても好き…なはずなのだけど、忘れっぽい私の頭の中にはなんとなくの記憶しか残っていないくて…。
こんな状態で最新刊を読むのはもったいない!というわけで、まずは1作目の『街の灯』を再読。

特にこのシリーズの北村さんの文章は、主人公英子の立場と年齢のせいもあってか「高潔」という印象を持ちます。大袈裟な言い方かもしれないけど、私のイメージはそう。凛としていて、それでいて優しい。
やはり好きだなあと改めて思いました。

続けて『玻璃の天』を読む予定。

『アイスクリン強し』 畠中恵 

アイスクリン強し
舞台は明治23年。西洋化の波が押し寄せる中洋菓子店を開こうとしている青年が主人公。回りを固めるのは、自分たちを「若様組」と呼ぶ士族の子息の巡査たち。紅一点は、時代に乗って成り上がった裕福な家の娘さん。
このとてもとても心惹かれる設定に、表紙の絵がまた素敵なものだから、期待がどうしても大きくなってしまいます。

過度の期待を持って読み始めたのがいけなかったのか、なかなか登場人物たちが頭の中で像を結んでくれず、1話目を読み終わるのに結構時間がかかってしまいました。
そこから先は波に乗れたようですんなり最後まで読むことができたのですが、読み終えての感想は、「うーん、物足りないなあ」。
物語全体の雰囲気を重くしたくなかったのかもしれないけど、この時代の暗い部分について話に取り入れているのに、それをあまりにもさらっと流している感じがしてしまって。
特に「ゼリケーキ儚し」の後どうなったかについて、後の話の中で全く触れられていないことが残念。そこ、重要ではないのかな?

設定はとても魅力的なだけに、惜しいなーという気持ちです。

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