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『たまさか人形堂物語』 津原泰水 

たまさか人形堂物語
この本、図書館の新着案内の中にあったのを見て「え、新刊出てたんだ!」だったので、手元にくるまでどんな話なのかはおろか、装丁も厚さも全く知りませんでした。
図書館のカウンターで受け取った時の最初の印象は、「薄いなあ」。で、本を開いた時は「字、大きめだなあ」。なんだかんだいって物語のボリュームと話の長さを結びつけて考えがちな私は、今回はさらっと気軽に読める感じなのかなーと、ものすごく軽い気持ちで読み始めました。

舞台は玉阪人形堂という世田谷にある小さな人形店。小売もやってはいるけれど、主な仕事は持ち込まれた人形の修理。店主は、祖父から半ば強引に受け継がされた、30代を着々と進行中の澪。従業員は、「修行でもあるから無給でもかまわない」なんていっちゃうなんだか素敵な青年冨永くんと、なぜこの小さなお店に来たのかがわからないほどの職人で私生活については一切明かさない謎の人師村さん。
この3人の組み合わせがとてもいい感じです。

はじめの話の依頼主は、テディベアの修理を依頼に来た親子。息子がいつも抱いて寝ているテディの修理という内容から、私は勝手に「そうか、こうやって大切にしている人形を連れてくる人との交流を描いたハートウォーミングな短編集なんだな」と思いつつ読み進めました。

結論から言うと、私のこの最初の印象は全く的外れなものでした。
最初の話の途中から「あれ、思っていたのとは違う…?」で、次の話で「しまった、これは気楽に読み流せるようなほわほわした話じゃないよ」。

そう、この本の作者は津原泰水さんなのでした。
今まで何度も思ったことだけど、津原さんの物語は、どんなに文章が読みやすくて軽く受け止められそうに見えてもその球は見かけ以上に重くて、気がつくと真剣に向き合ってしまっているのです。
今回もそれは同じでした。

読み終えて、なんとなく読後感が『蘆屋家の崩壊』の時と近いな、と思いました。非現実的な出来事が起きるわけではないのにどうしてかな。澪と一緒に、出会った人が立つ淵の向こうを覗いてしまったような気がするからかな。
自分の立っているところがぐらぐらと揺れるようなこの感覚は、なんともいえません。

彼らの今後がものすごく気になります。この頁をめくったら終わりなんだと思ったら、最後の頁でぐずぐずと何度も文章を読み返してしまったぐらい、読み終えるのがさみしくて。物語はここで閉じるのがいいのかもしれないけど、それでももっともっと読みたい。

とても私好みな物語でした。
そして、面白さと本の厚さは関係ないんだなと改めて思いました。
ほんと、第一印象なんて全然当てにならないや(笑)

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たまさか人形堂物語 津原泰水

祖母から人形店を継いだ元OL澪。人形マニアの冨永くん、謎の凄腕職人の師村さん。 修復する人形の謎を解く、連作短編集。 蘊蓄もあり、...

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