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『ノスタルジア』 埜田 杳  

ノスタルジア (角川文庫)
眠れない夜、ふと窓を開けてみる。まるで深海のような街。その海の底を漂うように歩く同級生矢鳴と出会う。
その夜をきっかけに言葉を交わすようになった僕と矢鳴。彼は僕に「あれ」 ―体の一部に羽が生え、飛んでいってしまうという奇病― に罹っていることを告げる。

読み終えてあらすじを思い返してみると、設定自体は現実とは思えないファンタジックなものなのだけど、読んだ印象は不思議とファンタジーではないのです。かといって現実的というわけではなくて、「僕」が窓の外に見たような、暗い、けれども透明な海の底をたゆたっているような、そんな感じでしょうか。

体の一部に羽が生え飛んでいく。その部位や大きさはいろいろで予測がつかないけれど、いつかはその人の全てが喪われてしまうことはわかっている。
設定はとても非現実的だけれど、それは現実の様々な事柄に置き換えることができて、それを喪うこと、喪ってしまったことについて考えること、そしてそれを少しずつ忘れて生きていくことは私の日常にも繋がっている。だからあまりファンタジーという感じがしないのかもしれません。

「僕」が矢鳴やキューピーさんに対して抱いていた感情について語られる言葉はあくまで淡々としていて、彼らの存在は薄い幕の向こうにいるようです。だからかな、読んでいて熱い気持ちにはならない。けれど喪うことへの痛みはこみ上げてくる。それがなんともいえない感じです。

「些末なおもいで」だけでなく、一緒に収録された「dysprositos」「熱い骨」にも言えることなのだけど、物語はどこかへ辿り着くわけではないので、描かれた感情について何らかの決着がつくような終わり方はしません。ほんの少し明るい何かが見えたような気がするけれど、言葉にし難いもやもやした気持ちが強くて、読み終えても読み終えた感じがしませんでした。
この感じ、好き嫌いがわかれそうだな、と思います。私は…「好き」と真っ直ぐに言い切ってしまうのは何かが違う気がするのですが、嫌いではないです。

三浦しをんさんの解説が、いいですね。自分で自分の気持ちがよくわからずに持て余してしまったところを整理してもらえた気がします。なるほど。

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