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『私が語りはじめた彼は』 三浦しをん /新潮社 

私が語りはじめた彼は子供のように無邪気に愛を求め続ける村川という男。彼に捕われてしまう女たち。彼らの愛憎は否応なしに周りの者を巻き込んでゆく。6つの物語からなる連作短編集。

ただ、村川という男は前面には出てこず、彼を愛した女たちも物語の主役ではなくて、語り手は女の家族や更にその外側の人間なんですね。描き出されるのは村川と女たちの愛憎ではなく、みなが抱えた心の痛みや心の穴。

端正な文章で紡がれる物語に読むことの幸せを感じながら読みました。
暗い穴を覗き込んだようになったり、光が見えたと思ったり、闇に絡めとられたような気分になったりといろいろなことを感じながらたどりついた「家路」。この話がしめくくりだったからかな、読後の気持ちは暗くはないですね。描かれた愛することの醜さも、愛憎の果てにある孤独も、もしかしたら暗い闇さえも、今はひんやりといとしいものに感じています。そうやって見つけたものを心の奥にしまって、人は毎日を生きていくんだな、なんて思いつつ。

単純に好きだと思うのは「予言」。読後の暗い余韻に惹きつけられたのは「水葬」。
「結晶」は読了後にもう一度読み返したら更に味わいが深くなったように感じました。過去を語る彼女が見せる生っぽさと最後に感じた凛とした空気の違いがとても印象に残ります。
もしかしたら無性にこれを読み返したくなる時があるのかもしれないな、と思う本でした。

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